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Project DAN DANの森

生産・製造された商品を収め、品質を保った状態でユーザーに届ける。梱包資材として活用されている段ボールには、軽量で多様な形状に加工でき、廃棄しやすくリサイクルが可能であることなど、多くの特徴がある。
こうした特性を活かして利用の幅を拡げ、さらには社会に貢献する。日本トーカンパッケージ(以下、NTP)では、段ボールが秘めている無限の可能性を追求し、様々なアクションを展開している。
ここではその事例として、2021年に行われた『DAN DAN DOME』の開発、そしてそれをきっかけに2023年より始動した『DANDANの森』の取り組みを紹介したい。

DAN DAN DOME

「収める」から
「空間をつくる」へ。
段ボールの新たな
可能性を体現

『DAN DAN DOME』とは、段ボール製の組み立て式ドーム型テントである。NTPも所属する東洋製罐グループホールディングスと特定非営利活動法人FIELD assistant村上祐資氏(極地研究家)とのコラボレーションにより開発された。
NPO法人の活動として、村上氏がプラスチック製のドーム型テントを開発し、被災地などへの提供を行っていたが、重量があるため輸送や設置に課題があった。段ボールを使用することでこうした課題の解消を図れないだろうか、と相談を寄せられたことが開発のきっかけとなった。
NTPにおいて開発を率いたのが技術本部 包装開発センター長(当時)の佐藤 康博。その下で実務をリードしたのが包装技術グループに当時所属していた一丸 欣司である。ドーム型テントの素材をプラスチックから段ボールに置き換えるという開発だったため原型はあったが、80枚以上に及ぶパネルをどのようにつなぎ合わせるかが難題だった、と一丸は当時を振り返る。「リサイクルしやすいという段ボールの特性を活かすためには、特殊な工具や金具などを使用せずに接合部は段ボール(形状)のみで解決したい。けれど、いくら紙でできているとは言え、テントになるほどの大きさですからある程度の重量があり、強度を確保するためにはひと工夫必要でした。」

様々な形状で試作品をつくり、実験を繰り返すこと約1年。段ボール製の接合部を押し込み折り曲げて成形するロック機構を採用することで、難題を解決することができた。さらに、雨や雪が降ったり湿度の高い環境下でも使用できるよう、NTPの独自技術であるラミネート加工を施した耐水性段ボールも採用した。
こうしてDAN DAN DOMEが完成。「おる・つなぐ・むすぶ・はる」という基本動作を繰り返すだけで誰でも組み立てや設置ができ、シンプルな構造のため壊しやすく、その後の再資源化も可能という、段ボールの持ち味を存分に発揮するプロダクトとなった。被災時はもちろん、アウトドアやものづくり、アート活動など幅広いシーンでの活用も期待されている。
そして、このDAN DAN DOMEがNTPを新たなCSR活動のフィールドへと導いていくこととなった。

技術本部 包装開発センター
センター長
一丸 欣司

私が所属する包装開発センターの役割は、商品流通の際に使用されるパッケージを設計・開発すること。しかし、“空間をつくる”というNTP製品群の中では飛び抜けて異質なプロダクトの開発に携わったことで、段ボールにはまだまだできることがあると改めて実感しました。様々な検証実験の結果から、DAN DAN DOMEのポテンシャルの高さは折り紙付き。現在は宇宙空間での活用を目指し、宇宙開発向け閉鎖環境検証モジュール『DAN DAN DOME SPACE』として実験が始まっています。

DAN DANの森

社員の手による
森づくりで、
自然環境をすこやかにし
地域に元気をもたらす

DAN DAN DOMEがどのように活用できるのか、NTPは国内各地で様々な検証実験を実施。その過程で出合ったのが、北海道内陸部に位置する沼田町である。国内有数の豪雪地帯である沼田町で耐雪試験を行うほか、継続的な地域貢献活動として町内で森林整備を行うこととし、2023年に沼田町町役場と協定を締結。『DANDANの森』と名付けられた山林で、社員による整備活動がスタートした。社会貢献活動や環境保全につながる取り組みであるとともに、段ボールの主原料であるパルプの素材の一つである木の大切さを社員が実感できる場としての活用も目的の一つ、とDAN DANの森プロジェクトを推進するCSR部の武井豊は語る。「このプロジェクトの特徴は、沼田町が提唱する“沼田方式”により馬や羊を放牧し食物連鎖の力も借りて森林整備活動を行うこと。樹木や下草の伐採のほか、馬や羊の世話も活動の一環です。食事も外で薪を使って自炊するなど、なるべく自然に親しむ時間が多くなるようにプログラムを組んでいます」。

プロジェクトが本格始動した2024年度は6~9月に活動を実施。国内13工場と本社各本部にそれぞれ社員1名を選出してもらい、そのうち3名が2泊3日で参加する、という内容だ。九州など遠方に位置し集合に苦労する工場もあったものの、参加した社員は皆熱心に活動し、同じ会社で働く仲間とはいえ、ほとんど初対面同士にも関わらず自然と役割分担ができ、助け合っている様子も見られた、と武井は微笑む。「参加者からは“自然を直に感じる貴重な機会となった”、“地域社会への理解が深まった”といった声が寄せられています。この取り組みは沼田町でも企業との協働の成功事例として受け止められており、得られた知見をもとにさらに企業誘致を行っていきたい、という話もいただいています。近隣市町村の関係者がDANDANの森の見学に訪れることもあるそうです」。
今後も森づくりを進めるとともに、ツリーハウスや丸太橋の設置を予定。NTP社員の手でさらに充実していくDANDANの森は、いずれ地域活性化に一役買う存在となっていくかもしれない。

CSR部 部長
武井 豊

DANDANの森の取り組みが社内で浸透しつつあることを感じています。自然を身近に感じることで段ボールを扱うNTPの事業を改めて見つめる機会にもなりますので、多くの社員に前向きにこのプロジェクトに参加してほしいと思っています。私自身はこの取り組みで、事業以外の切り口でも行政など様々な機関と交流し、役立つことができるのだと再認識しました。これからも取り組みを継続し、“地域に元気をもたらす会社”として企業価値の向上も図っていきたいですね。

技術本部 本部長
佐藤 康博

段ボールは約95%がリサイクルされる、サステナビリティの観点から見ても優れた存在です。それまで他の素材が使用されてきたものを段ボールに置き換えることで、使い勝手や廃棄性を向上させ、社会や環境に貢献することもできます。NTPでは、段ボール製のベッドやパーテーションを開発し、被災地に救援物資としてお届けする活動も。これからも、段ボールの可能性を追求するとともに、DAN DAN DOMEからつながったDANDANの森の取り組みのように、社会や環境に役立つ活動を積極的に展開していきます。

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